――「グローリオ蘆花公園」は、「安全・安心・高品質」を追求した設計・施工を行い、品質管理についても徹底した体制で臨まれていると聞きました。事業主であるセコムホームライフ(SHL)の品質管理に対する考え方の軸はどこにあるのでしょう。

渡邉(SHL)「品質管理を徹底して行うのは、お客さまの大切な住宅の資産性を、将来の永きにわたって確保するためです。そして住宅というものを個人資産という枠組みとして捉えるということにとどまらず、日本の風土や美意識に適合した持続性ある社会的資産として発展させていくということが、これからの不動産業界における我々の大切な責務であると考えています。その理念に基づいて、世代を超え、住むほどに愛着が深まり、永く愛される建物をつくるために、私たちは徹底した品質管理に基づいた施工プロジェクトを実行しております」

セコムホームライフ(株)
建築本部 本部長付部長
渡邉 誠

――本プロジェクトでは工事過程において、業界初のお客さまへの情報開示方法、品質管理体制を実施されるそうですが。

渡邉「当社は2000年以前から施工部門が中心となり、毎月工事の進捗状況を紙ベースのレポートにまとめ、お客さまにお知らせするサービスを行っていました。

事業者として単に売るだけではなく、責任あるものづくりを行っているという企業姿勢をご理解いただきたかったからです。ところが3年ほど前に記憶に新しい耐震偽装事件がおき、当社としてはもっとシステムを発展させて品質管理する必要性があると判断。そこで開発されたのが、お客さまにインターネットを通じてご自宅にいながら工事の進捗状況や履歴写真を閲覧できる、SCR(セコムコンストラクションレポートシステム)です。そして今回のプロジェクトでは、さらに施工担当である前田建設の建設情報管理サービス・TPMs(トータルプロセスマネジメントシステム)を融合させ、施工における全記録が柱1本といった細かい部分までがデータベース化して残されるという、過去に類を見ないサービス提供を実現させました。同時に、建築の各プロセスを事業主責任として自らすべてを検証し、設計者、施工者、事業主が三位一体となって監理していくという、新しい品質管理体制も整いました。」

前田建設工業(株)
TPMプロジェクト推進室 マネージャー
曽根 巨充

曽根(前田建設)「当社は業界の中でもICTを使った業務効率化への動きにいち早く取り組んでおり、その中でもTPMsはインターネット上でリアルタイムに建物に関する文書(図面、議事録、各種履歴、等)や写真を共有・一元管理するシステムで、今回は施工段階における運用です。施工管理に必要な情報が一元化され、事業主に対していつでも情報の開示をしていますので、確かな情報の連携を図ることができ、建物をつくりながら品質管理に関するデータベースを構築できるというメリットも生んでいます。363邸すべての部屋の細かな写真や品質に関する記録を残すという実に膨大な作業となっていますが、セコムホームライフのSCRとの融合と信頼という名の下に実行する価値は十分にあると思っていますし、業界初の取り組みとして全力で対応しています。」

――住戸それぞれの様子が分かるというのはとても画期的ですが、ユーザーにとって、具体的にどのようなメリットが考えられるのでしょうか。

渡邉「撮影は、床・梁、柱・壁のほか、配筋・配管・配線などの隠れてしまう部分の写真まですべてです。例えばある箇所にひび割れが生じた場合、ここに鉄筋は入っているのだろうかとお客さまの誰もが疑います。そのときこちらはすべてデータで保存していますから、すぐに履歴を調査し、適切な対応へと結びつけることができます。我々が大事にしているのは、住み始めてからのこと。入居後始まる生活を意識しながら品質管理というものをとらえています。写真等の記録がこれだけ残るということは、将来の大規模修繕や各住戸のリフォームにおいてもとても安心です。つまり、土地からずっと履歴管理ができる。200年住宅という言葉も使われるようになりましたが、これからは履歴によって品質のいいストックができ、長く住む家が手にできます。それは自然環境を守るという点でも欠かせないものであり、SHLのマンションの将来にわたっての大きなサービスと言えます。」

近(前田建設)「これまで建物完成後の記録である竣工図面、写真、検査記録等は紙ベースの保管が中心でしたが、今回は施工をしながら施工時の記録をWEBのデータベースとして様子が詳細に残るわけですから、将来まで建物の信頼を確保できることにつながります。今回現場事務所に待機しているスタッフは工事グループ、工務グループ、施工図室、そして品質記録室と4グループに分かれており、品質に関する記録や施工状況の写真撮影は品質記録室が専任で担当しています。また写真に入るコメントについても、お客さまに興味を抱いていただけるようちょっとした工夫を心がけております。」

前田建設工業(株) 東京支店
グローリオ蘆花公園新築工事 所長
近 敏幸

曽根「写真ばかりでなく、現場ではウエブカメラも稼働しています。マンションギャラリーでいつでも映像を流しておりますので、現場のリアルタイムの様子や周辺道路の状況までもご覧いただけます。また現場内に異常がないかどうか容易に確認できるなど工事中の安全確保としてもとても有効です。関係者間で仕事をしながら電子化された情報をリアルタイムに検証することで確実な施工につなげ、さらにその情報を竣工後のトレーサビリティの確認にまで利用できることなどが、今までにない特徴かと思います。」

――厳格な品質管理体制といえば、通常の現場ではなかなか行われていない、事業主、施工関係者によるさまざまな検討会や勉強会が開かれていますね。

内田(SHL)「施工に関わる検討会というと、建設会社が独自で行うケースがほとんどですが、我々事業主主体での検討会を各段階で積極的に行っています。主に施工検討会、構造検討会、仕上工事施工検討会などがあり、いずれも建設会社の担当者だけでなく、さまざまな下請業者までもが一同に顔を合わせて意見交換するのが特徴です。本来現場では、何か問題が出たときに直接の関係者だけが集まって対応するというスタイルですが、そうではなく、起こり得る問題を事前にすべて上げていき、対策をいち早く講じながら施工を進めていく。事業主サイドには、アフターサービスの中で建物が建ってからのさまざまな事例が情報として蓄積されています。こうした事例を新たな建築に生かせるのは、お客さまと直接に対話を重ねている事業主だからこそ。常に先々を見越した対応というのを、心がけています。また、建築というのは工場生産とは異なりすべてが人による手仕事です。職人の技量は一人ひとり異なりますから、それをできるだけ均一化させた商品に仕上げるために、施工および構造勉強会も開いています。これにより、末端の職人に対しても意思の疎通が可能となり、確かな品質管理にもつながっております。」
セコムホームライフ(株)
建築本部設計監理部 部長
内田 康之

――SHLでは、以前からお客さまへの中間内覧会を開いて現場を実体験していただくサービスを行っていますね。

内田「中間内覧会は、お客さまに工事途中段階で現場状況を確認していただきながら、マンションというつくりがどのようになっているのかを大まかにご理解いただくという目的があります。壁の裏側、床下などを直接お見せすることによって、万が一水が漏れたらどうなるのか。振動や音はどのように伝わるのか。なぜ釘を打ってはいけない箇所があるのかなどリスク面をお話し、その上で給水や排水、換気や乾燥についてなど、生活面でのアドバイスもさせていただいています。集合住宅での暮らし方を知ることは、より快適な暮らしへの足がかりとなると考えています。」

「こうした流れを経ると、お客さまの建物に対する安心度が格段に違ってきます。中間内覧会がない場合、ご購入いただいたお客さまと我々施工会社の担当者が施工途中で顔を合わせる機会はほとんどありません。全て仕上がった引き渡し前の内覧会で始めてご購入者と顔をあわせることになります。すると多くのお客さまが、本当に大丈夫ですか?といった顔をしながら我々の話を聞いている。ところがこうした工事途中での内覧会や、また今回のようなインターネットでの履歴確認が事前に行えれば、お客さまもそれぞれ情報を持っていますから業者とよりつっこんだ対話をすることができます。それはお客さまにとっても、また我々にとっても、とても良いことではないかと思います。」

熊谷(前田建設)「情報を開示し、見せていく必要性。営業担当者としても、こうした業界の流れは刺激があります。裏方として現場が施工しやすいよう、事業主との架け橋になりたいという思いはこれまでどおりですが、新しい技術開発についてもきちんとご説明できるよう確かな知識をもって、関係者の方々と接していきたいと思っています。」

渡邉「工場で1つの製品ができあがる過程を管理しているように、建築現場でもそれぞれの履歴が残っていれば品質管理は間違いなく向上します。今回のプロジェクトは建築業界におけるトレーサビリティへの果敢な挑戦と同時に、我々が今やるべきことすべてにおいてやり切るという、集大成の作品となりそうです。」

前田建設工業(株)
建築事業本部 生産施設事業部 主任
熊谷 誠人

――お客さまは、現場の職人さんと会話する感覚でマンションが完成する様子を見守ることができそうですね。業界初の取り組みに大いに注目し、期待を寄せたいと思います。

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